東海若手起業塾の塾生時代、そしてその後も長きにわたってお世話になった小出宗昭さんの訃報に接しました。

小出さんと初めて正面から向き合っていただいたのは、私がスイカを作り始めて1年目の夏が終わった頃のことでした。 初めての収穫を終え、「これからどうやってまちづくりに農業を活かしていこうか」と意気込んでいた私は、その視点で相談をしたくて東海若手起業塾の門を叩きました。

しかし、そこで返ってきたのは予想とは全く違う、厳しい言葉でした。当時、メンターだった小出さんからは

「農業かまちづくりか、どっちかにしろ。両方とか甘く見るなよ」

当時の私はまだ20代。若さゆえの勢いもあり、「AかBか(A or B)」ではなく「AもBも(Both A and B)」両立させることこそがかっこいいのだと信じて疑いませんでした。根拠はなくても「俺ならできる」と本気で思っていたのです。 ずっと悩み、考え抜いた末、最終報告会の場で私は小出さんに向かって「両方やります」と宣言しました。

結果は、大目玉。最後の最後だというのにブチ切れられ、こってりとお説教をいただいたことを、今でも鮮明に覚えています。

あの最終報告会でボコボコにされた私は、正直なところ起業塾に対して少しトラウマを抱き、「しばらくは近づきたくないなぁ」と思っていました。 それでも心の奥底で静かに燃え続けていたのは、「いつか『俺、両方やってます』と胸を張って言えるようになって、もう一度小出さんの前に立ちたい」という意地でした。

あの時の「なにくそ」という根性があったからこそ、私は本気で事業に取り組むことができたのだと、今ならわかります。 実際にやってみて、両方を追いかけることの大変さも、小出さんが言っていた「甘く見るな」の意味も身に染みて理解しました。そして同時に、起業家にどう向き合い、どう支援するべきかという姿勢そのものを、小出さんから学ばせていただいたのだと感じています。

それから数年が経ち、妻の商品開発プロジェクトで小出さんに相談する機会がありました。 私が同行する形での、久々の再会。 そこで「元気にやってます」と報告すると、小出さんは「そうか、よかったな」と朗らかに笑ってくれました。 その時はすでに少しお痩せになっていて、昔のような圧倒されるほどの力強さはなかったけれど、その優しい笑顔を見たとき、私の中にずっとつかえていた「一つの心残り」がすっと溶けていくのを感じました。

15年前にいただいたあの厳しい言葉が、なぜ今でも私の心に深く刻まれているのか。 それはきっと、小出さんが一切の忖度なしに、一人の若き起業家に対して「本気」でぶつかり、向き合ってくれたからに他なりません。

あの日、真正面から怒ってくださったことに、今更ながら心からの感謝が溢れてきます。

小出さん、本当にありがとうございました。 どうか安らかにお休みください。心よりご冥福をお祈りいたします。